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俺は息をのんだ。
その話の内容もさることながら、沙織の泣きながらの、喉奥から絞り出すような告白が何とも痛々しくて、俺は耳を塞ぎたくなったが、それは必死の思いで耐えた。
「犯人は捕まらなかった。……でもそれは私にはもう、どうでもいいことで……、私は自分を責めたわ。打ち上げ花火に見とれていて、美葉ちゃんの手を離してしまった自分を。それから、打ち上げ花火を見れば、その音を聞けば、自分を責める言葉が頭に浮かぶようになったの。私はそれが耐えきれなくて、大人になってからは極力、打ち上げ花火に遭遇しないで済むように、尽力したの……。だけど、なんで……」
「だけど、遊園地の花火大会までは、行政のサイトに載っていなかったってことか」
俺は半ば呆然としながら呟く。沙織は力無く頷いた。
……まさかそんな事情があったとは。
俺はよろよろとリビングのPCに駆け寄ると、電源を入れ、遊園地のHPにアクセスしスケジュールページを目で追う。
だが、結果は最悪だった。
「堀北ドリームパーク 花火大会 8月末まで毎夜開催」
絶望に打ちひがれる俺の目に、華やかな花火の画像のバナーが躍る。俺は嘆息し、PCの電源を乱暴に切ると、思わず、天井を仰いだ。
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