2020年3月

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 水曜日、ミーティングルームで玲奈は真紀とまりえと三人で昼ごはんを食べていた。結婚の話はいつしようか、まよっていたのだが、親にも話は通したし、そろそろいいだろうと思ったのだ。 「ええとね」  すこし改まった様子の玲奈に、二人はなにごとかと顔をあげた。 「ええと。結婚しようという話になりまして」 「なにい? すこし早すぎないか?」  真紀が目をむいた。予想通りの反応だ。 「だよねー。あたしも最初はそう思ったんだけど、はじめからそのつもりだったと、当然のようにいわれてね」 「なんだ、のろけか。コノヤロー」  まりえがツッコむ。 「そういうわけじゃないのー」 「そうかー。森さんは一目ぼれだったかー」  そういうまりえに、真紀はいい返す。 「いやいや、あれはおたがい一目ぼれだったね。コトって音がしたもん」 「なんの音?」 「いやだねぇ。恋に落ちる音だよう」 「ああ、そういえば聞こえた気がする」  まりえまでいい出す始末だ。 「そんな音するわけないじゃん」  玲奈の顔が赤くなった。見通されていたとはなんともはずかしい。 「森さんも、菅原、岡田両氏にツッコまれてるだろうね」 「だろうねぇ。まあ、そういうことなら時間の問題ではないんだろうね。よかったじゃん。おめでとうございます」 「うん、おめでとう」  真紀とまりえは、感慨深げにうんうんとうなづいた。 「ところで。式はいつごろの予定で?」  真紀が聞いてくる。 「予定はまだ、ぜんぜん。ゴールデンウイークに実家に行ってあいさつしてくるの」 「そっか。美男美女で見栄えのいい結婚式になるね」 「やだぁ。美男はともかく、美女って」 「常々思ってるんだけど、玲奈は自覚がないよね」 「ないない。この結婚に何人の男がどん底にたたき落されるのか、ぜんぜんわかってない」  二人の物いいに、玲奈の頭にはてなマークがうかぶ。 「あなたね、そこそこモテるんですよ。見た目もまあまあいいし、へんに媚びないし、仕事もできるしね」  真紀にいわれて、玲奈の目が点になった。 「え、あたし?」 「そうよー。営業の坂本さんなんて、しょっちゅう話しかけてきたでしょ」 「……そういえば」  玲奈は企画開発なので、営業とはあまり接点がない。それなのに顔をあわせることが多かった。玲奈はただの偶然だと思っていたのだが。 「ほかにも何人かいるよね。おたがい牽制しあって決定打が打てないうちに、森さんにさらわれちゃったね」 「……ぜんぜん気づかなかった」 「だから、自覚がないっていってるの。まあ、大手商社勤務のイケメンじゃだれも文句いえないって」 「で、プロポーズはどのように?」  まりえが聞いた。やっぱり聞くか。 「はあ、それがね」    玲奈は正直に話した。  真紀とまりえには、イスから転げ落ちるほど大笑いされた。
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