2019年12月

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 合コン会場はおしゃれ居酒屋の個室だった。三人そろって、待ち合わせ時間の五分ほど前に行くと、相手方はすでに席に座って待っていた。 「おまたせしてごめんなさい」  真紀が幹事になって仕切ってくれる。 「いやいや、せっかくだから交互にすわりましょうよ」  最初からかよ。とは思ったけれど、幹事は任せてあるので、いうとおりにする。真紀の同級生は、菅原という。  待っている間に、くじを作ったらしい。折りたたんだ紙切れを引かされた。書いてある番号で席が決まっているらしい。  玲奈は、菅原と森という二人にはさまれた。  知らない人にはさまれるのは、緊張するなあ、などと思っていると、右隣にすわった森から、 「くっつかないように気をつけますから」  と、いわれてしまった。見透かされたようだ。 「あー、お気遣いなくー」  返事をしながら、なにげなく顔をみる。  なかなかいいかもしれない。     日頃仲間内では、不平不満を口ぎたなくいい合うのだが、ここではもちろんそんなことはいわない。楽しいですよー。やりがいありますよー。とほほ笑む。 「なに飲みます?」  菅原がドリンクメニューをさしだしてきいた。 「わたしたちはみんなビールで」  真紀が答える。 「甘くてシュワシュワしたやつじゃなくて?」 「甘いお酒は好きじゃないんで」 「あれー、じゃ、ガチの居酒屋でもよかった?」 「そっちでもだいじょうぶよ」 「そっか、女子はこういうお店のほうがよろこぶかと思った」 「いやー、よろこんでるわよ。ねっ」  同意を求められて、玲奈とまりえも 「はい、よろこんでますー。おやじ系もいけますって、話です」  と答えておいた。 「もしかして酒盗とか好き?」  菅原がつづける。 「酒盗、だいすき!」  三人が声をそろえた。 「まじかー! じゃ、つぎは酒盗のあるお店にしよう!」 「やたーーー!」 「酒豪があらわれた」 「もしかしてザルなのか!」  なんだか、注文する前から楽しくなってきた。  最初のビールがカラになるころ、 「つぎ、なに飲みますか」  と、森が聞いてきた。玲奈はドリンクメニューをみる。 「焼酎もありますね。じゃあ、イモをロ……水割りで……」  森はクスリと笑いながら、 「ロックでもいいですよ」  といった。 「いや、水割りにしておきます」  玲奈はちょっと赤面する。 「合コンで焼酎たのんだ時点で、女子力なくなってますよ。いや、気取ってなくていいですけど」 「はあ、量は控えます」 「今日は楽しく飲めそうですね」 「なんかキャピキャピの女子じゃなくってすいません」 「いえ、とんでもない。ああいうタイプって疲れるんですよ。今日はほんとに楽しいですよ」 「ならよかったです」  うそでも、露骨にがっかりされなくてよかった。
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