花火なんて、やっぱり嫌いだ

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 俺は、花火が嫌いだ。  夏休み明け、クラスのみんなが自慢げに話していた海水浴もキャンプも、俺は一度たりとも連れて行ってもらったことはない。  ほんのささやかな庭先でのバーベキューですら、やりたいと言ったら怒られた。 「この忙しい最中(さなか)に何がバーベキューだ!」  あの時の親父の顔は忘れない。  ちらりと俺に向けられた目は血走り、黒光りする汗ばんだ頬には、真っ黒い(すす)がこびりついていた。  風呂場へ向かう親父の背を見送り、俺は力いっぱい拳を握りしめた。  そうしないと、涙がこぼれてしまいそうだったから。  たったひとつで良かった。たったひとつでいいから、絵日記に描くエピソードが欲しかった。  ただ、それだけだったのに。  その時ほど、俺は自分の運命を呪ったことはない。
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