プロローグ

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この国に生まれると、多くの子供は小中高と、なんとなく普通に進学する。 大学に進むときに、成績とか将来の志望によって道が分かれる。 大学を卒業すると同時に、できれば自分が望む分野の会社や組織に就職出来たらいいかな。真面目に一生懸命働いて、貯金もして、いつか一緒に生きていきたいと思えるパートナーに出会えたら結婚とかするかもしれないし、しないかもしれないし。 俺にとって高校時代がものすごく充実していたから、その仲間たちとはできたら長く付き合っていけたらいいなと思う。 あとはまぁ、それなりにちゃんとやってれば、普通に自立して生きていくくらいはできるだろう。 今までの俺は、そんな風に思ってた。 18歳で高校を卒業するまで、周りにいたクラスメイトのほとんどは、自分と同じような生活をしていたと思っていたし、俺の世界は本当に限られた空間の中だけで成り立っていた。 あの人と出会ってから、今まで知らなかったことをたくさん知った。 ちょっと調べれば、いくらでも情報なんて手に入るのに、俺はそれまで自分からはまったくアプローチしなかったから知らなかったんだ。世の中には、どう頑張ってもひっくり返せない格差みたいなものがあって、特に子供のうちは生まれた場所によってその人生は大きく左右されるってこと。 一応平和と言われているこの国の都市部に生まれて、平均的な生活を享受してきた俺だけど、それは俺の功績では全然なくて、本当にただの偶然。 その環境の下で、それなりにまじめに一生懸命やってきて、将来の目標と呼べるものも心の中に持っている。 自分の今までの生き方を、否定するようなことはしない。 でも。 自分の人生を一歩ずつ誠実に進めながらでも、できることはあるんじゃないかって、思うようになった。 あの人と出会えたことで、自分が少し大人になった…というか、視野を広げることができたんじゃないかなと思う。 それだけでも、あの人との出会いは俺にとって本当に素晴らしいものだったんだ。 もちろん、だからといってこのまま諦めたりはしないけど。 俺にとって、大切な人生の学びを与えてくれたあの人にとって、逆に俺はどんな存在になれるだろうか。 何か一つでも、俺といるメリット…というか、俺といたいと思ってもらえるポイントを作るために。 頑張ろうと思う。
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