(5)後悔

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「本当に山女(やまめ)なのかっ? お前っ、おる⁉︎」  まるで死ぬ事が前提だったみたいな里長(さとおさ)の口振りに、山女は息を呑んだ。 「これまで(にえ)になって戻ってきた娘がおらん事はお前も知っておろう? あれは皆、龍神様に喰われたからだ。なのにお前――。まさかあの日、務めを果たさず主様から逃げたのか?」  六年半前、自分たちが縄でぐるぐる巻きにして、内側からは決して出られない駕籠(かご)の中へ閉じ込めておきながら、何故そんな風に思えるのだろう?  久々の再会を露ほども喜ばれもせず、そればかりかそんな風に疑われてしまって、山女は心底悲しくなった。 「私、」  ――お役目を放棄などしておりません!  そう訴えようとして、(しん)に抱いて貰えなかったばかりか、食してすら貰えなかった事を思い出した山女は、グッと下唇を噛んで黙り込んだ。  辰から与えられるばかりで何も返せなかった自分は、お役目を放棄したのと何ら変わりないのではないかと思って。  そんな山女の沈黙を、里の者達は先の里長の問いへの肯定と受け止めた。 「何て事だ」  にわかに里全体が騒がしくなって、半ば恐慌状態。  ややして、「今からでも遅くないのではないか? やり直そう」と言う声がどこからともなく聞こえてきた。
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