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待ち合わせは七月中旬の日曜日。
弘樹からの提案で車で待ち合わせ場所に向かう。
待ち合わせ場所に着くとなぜだか弘樹も車だ。
「お前、どういうつもりだよ」
隼人が問いただすと
「いいやん、車2台で行こう。俺の後ろを夢香ちゃんと一緒についてきて」
わけわからない。ダブルデートを誘ったのはそちらだというのに。
そのほうがゆっくり話せるしと弘樹は言ったが、ほぼ初対面でうまく話せない可能性は考えなかったのかと、隼人は不満に思った。
車の中で隼人は夢香に4人で出かけると聞いていたのに、車2台に分かれたことを謝罪した。夢香はにこにこして、隼人と一緒に出掛けることが楽しみだったからと答えた。
話すのは初めてだが気さくで明るい夢香は隼人の話を上手に聞き、気が付けば隼人は年下の夢香に夢中で仕事の話、学生時代の話、実家の猫の名前までなんでも話していた。年上の美咲と付き合っていたころは少しでも彼女に似合う男だと思われようと無理に大人を演じていたが、夢香と話していると等身大の自分でも十分大人の男だと思わせてもらえた。
心地よかった。
夢香の仕事の話を聞いているとき、夢香から以前来た取引先の人が夢香に付きまとい、ストーカー化した結果警察にお願いすることになったことを教えてもらった。
「あの時は本当に怖くて、しばらく受付から裏方に回って仕事をしていました。けれど警察からの注意で反省したのかストーカーが収まり本当によかったです。あ、すいません、こんな暗い話、お聞かせしちゃって。もう大丈夫なんですよ。」
そういって夢香は自分の細い右手首を左手で力強く握った。
もうおわったはずなのにどこかに恐怖があるんだろうとその様子からひしひしと感じられた。
待ち合わせから30分ほど走ってたどりついたのは…
あの約束神社。
何でここに来た?
と弘樹に小さい声で詰め寄ると
俺と香苗はここにきて約束が叶ったから、お前らもここでやくそくすればいいやん。
と軽く言ってのけた。
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