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解熱剤を我慢してみたら、熱は下がらない。元々熱が出るのって風邪のウィルスをやっつけるためでしょ。熱が出ていた方が早く治るんじゃない?
そう思って我慢したけれど、夜になって思うのは無駄な体力消耗だったってこと。
明日は野球観戦デートの日だった。
未来が過去形なんて、なんか嫌だ。ベッドにもたれて体育座りしていたら、泣けてきた。
誰とも会えずに一人でいて、熱が出て、喉が痛くて、ふらついて。体はだるくて、夜も眠れない。
話したい。会いたい。でも誰にも会えない。
「翔馬くん…」
昼間のメッセージはやっと既読がついた。
「会いたいな…」
膝の間に顔をうずめる。音がない世界はとても寂しい。世界中の人が風邪をひいていて、もう私しか生き残っていないのではないかと思うくらい、孤独だ。
本当はいろんな人が気にしてメッセージをくれる。遠く離れた両親も、先輩や同級生、皆が心配してくれる。
でも、誰にも会えない。
一番会いたい人に会えない。翔馬くんの笑顔が見たい。
「おーい」
空耳。幻聴だ。
「おーい、友子ー」
はっきり聞こえるなんて私は病んでいるのかな。風邪は引いているけれど。
「開けて。手が塞がってるんだ」
声は窓から聞こえる。そこには黒い人影。
「友子ー」
「…翔馬くん?」
慌てて窓を開ける。そこには箱を抱えた翔馬くんがいた。
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