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第二章 再会
「ほんとによく来てくれたわねぇ、紫波ちゃん。たくさん歩いて疲れたでしょう。さあ、座って」
少女を部屋に通すなり、出水はせっせと座布団を整える。
そんな後ろ姿に、紫波と呼ばれた少女はくすりと笑う。
「大丈夫だよ、おばあちゃん。私、そんなに重病人じゃないんだから」
紫波とは対照的に、振り向いた出水は不安気だ。
「でも、お医者様が運動は控えるようにって」
「もう、神社の前のバス停から階段登っただけでしょ。今まで、学校にもずっと歩いて通ってたんだよ」
「…そうかい。でも、無理はしないんだからね」
「はぁい」
紫波が頷くのを見届けると、出水はようやく笑顔に戻って、奥の部屋へと消えていった。
紫波も、座布団の上に腰を下ろす。
出水は父の昔からの知り合いで、紫波も小さな頃からよく知っている。だが、この神社に来たのはこれが初めてだった。
部屋の中を、ぐるりと見回してみる。古い木の香りが心地よい。
(…あ)
縁側へと続く障子の隙間から、広い境内が少しだけ見えた。
(そうだ、確か、ここのお庭に…)
障子に手を伸ばそうとした時。
「紫波ちゃん、今お茶を煎れるからね。お饅頭も食べるでしょう?」
そう言って、割烹着姿の出水がいそいそと台所へと向かっていった。
「あ、おばあちゃん、私も手伝うよ」
手を引っ込めて、紫波も慌てて立ち上がった。
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人の気配がなくなった境内に、ひらひらと小鳥たちが舞い降りてきた。
カヤは桜の上に戻って、そんな様子をぼんやりと眺めている。
そうして、もう何刻が経っただろうか。
――ガラガラッ
社の引き戸が不意に開く。
――!
そこから飛び出してきた少女に、カヤは再び目を瞠る。
少女はきょろきょろと辺りを見回し、そしてカヤを見つけると、ぱっと顔を輝かせた。
戸惑うカヤをよそに少女は駆け寄ってくる。無論、少女にカヤの姿が見えているはずは無いが。
「おばあちゃん、この木でしょう!?前に言ってた、千年桜の木!」
「こらこら、紫波ちゃん、走ったらいけませんよ」
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