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「私が来る前から、他の輩は全員そこに集合していたぞ。なあ?」
「!?」
カグヤの言葉を皮切りに。
茂みの中から、続々と顔を出す妖たち。
妖狐のすぐ後ろには、座敷童子と箒神も。
目の前にずらりと並んだ妖たちに、カヤはただ呆気にとられるしかなかった。
「どうして……」
という事はつまり、今までのやり取りは全て、ここにいる妖たちに筒抜けだったという事だ。
「…だって、心配だったんだもん!あの子が来てから、カヤ、なんかおかしかったから…」
耐えきれなくなったように、妖狐がそう叫んだ。
「…え?」
目をぱちくりさせるカヤ。
妖狐はそれきり、顔を真っ赤にして黙り込んでしまった。
すると後ろから、箒神がひとつ咳払いをして。
「盗み聞きなぞしてすまなんだ、カヤ殿。しかし、カヤ殿が何やら思い悩んどることくらい、ここにおる連中なら皆分かることじゃ」
その言葉に、カヤもふと真顔になる。
妖狐の頭を撫でてやりながら、箒神は続けた。
「ワシらは家族も同然。どうか、話して下さらんか。苦しいことは、分かち合うほど軽くなるもんじゃ。のぅ?」
箒神が、妖たちに問いかける。皆、大きく頷いた。
そんな様子に、カグヤは薄く微笑んで、カヤを見やる。
カヤはしばらくの間、黙ってそれらを見つめていたが――
「………ふぅ」
やがて、肩を竦めて、ひとつ溜め息を吐いた。
「分かったよ。…ありがとう、みんな」
その一言で、張り詰めていた空気がふっと和らぐ。
安堵の笑みを浮かべる一同を前に、カヤの目にも少しだけ、明るさが戻った。
「…長い話になるけど、聞いてくれる?始まりは…もう、千年以上も昔の事だから」
こうして、カヤの口からひとつ、またひとつと、その物語は語られることになったのだった。
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