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「っそんなの仕方ないよ……! 恋するのはどうしようもないし、ただ相手がいるだけでしょ? 出会うのが遅かっただけ。ここから頑張ればいいんだから」
「……そうかしら」
「そうだよ!」
がたんと立ち上がれば、宵子が見上げる。迷いに揺らいだ瞳が一度瞬きすれば強い光が灯った。決意と覚悟に染まる、ヒロインの瞳だ。
燃え上がる恋に溺れていくあのヒロイン。
「そう、よね。諦められないんだもの、仕方ないわよね。……もし、私、彼との付き合いを反対されたら」
どこまでも二人で逃げる、それぐらい好きなんだもの。
とろけるような言葉だった。
夢にも見たシチュエーションだった。実咲は宝石のように輝く宵子に、喜びに満ち溢れた声で応える。
見守るなんてもったいない。純愛を貫き通そうとする二人を応援するのが、実咲の役目だ。
「また、手を貸してくれる?」
「当然よ、親友だもん」
「夕美、今度は許してくれないかも」
「許してくれるよ、だってお見合いで知り合ったって言ってたから恋じゃないもの。それに」
運命なんだから。
お守りのような言葉を、実咲と宵子は声を揃えた。どちらともなく笑って、これからのことを話し合った。
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