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郷愁を感じさせる音が耳に届いて、表情が和む。
火花が四方に散って、さらに広がっていく。時間が経つと、少しずつ火花の範囲が狭くなって、中心の玉が地面に落ちると静寂が訪れる。
線香花火ばかりを選んでしんみりしていると、甥たちに腕を掴まれた。
「打ち上げするんだ。伯母さんも見ようよ」
子供たちを後ろに下げさせて、倫生が着火した。
私たちが子供の時も、父が同じようにしていた。一気に火花が筒から飛び出してきて周りを照らす。
続けて着火したものからは気の抜けた音の後、可愛い花が開いた。金色の花が綺麗。
「近いから、小さくても豪華よね」
志穂さんに笑顔で話しかけると、子供を抱いた彼女が微笑んだ。
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