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人ごみに逆らうように、観覧に向く場所から離れていった。
同じ川岸だから見えるけど、正面には及ばない。でも、人が少なくて落ちつく。
空は薄青い色から、濃紺へと移り変わった。細い月と明るい星たちが輝き始めている。
「理香」
呼んでくる低い声に、一瞬身体が震えた。
「どうして……」
「おばさんが、理香はきっと離れた場所にいるはずだからって」
母は、私が哲夫に会うつもりがないと気づいて、彼に連絡したようだ。
「息子さんは?」
子供がいるはずなのに、どうして一人なのか。
「父さんたちと一緒だ。孫と花火を見たいってさ。
それに、俺が理香に会いたいって言ったから。
事情は聞いてる。俺もバツイチだって聞いたんだろ」
頷いた。
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