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「実は、俺、ずっと理香のこと好きだったんだ」
「は?
全然そんなそぶりなかったけど」
幼稚園から高校まで一緒だった幼馴染。それ以上の感情はなかった。
「照れくさくてさ。
ずっと一緒だったから、どうやって告白すればいいか分からなかったし。
東京行った後、会うこともなくなっていったから、縁がないんだなって。それで、働いてから付き合うようになった相手と結婚したんだ。
失敗に気づいたのは、こっちに帰ってくるって決めた時。
無理だって思ったのは向こうだけじゃなくて、俺もなんだ」
「どうして?
奥さんが無理なのは分かるけど、哲夫はどうして?」
私の問いに、哲夫は、ほんの少し苦さの混じった笑みを浮かべた。分かりやすい表情をするタイプだから、珍しい。
「こっちに帰ってきたら、理香のこと、しょっちゅう聞くことになるんだぞ。
帰省の時、会わないようにやり過ごすってのはもうできない。ずっと理香のこと気にするだろうな。
結婚してるのに、他の女が気になる男とは一緒にいられないだろ?」
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