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見あげた夜空が潤んだ。
自分の子供を持てない私でも、何かを残せるのだろうか。
「憶えていてもらえるのかな……」
力強く頷く哲夫の向こうで、大輪の花が鮮やかに夜空を輝かせる。
私が、哲夫と彼の息子と家族になれるかは分からない。
でも、川の匂い。衝撃として伝わってくる打ち上げの音。小さな光りの玉が大きな花となって広がる光景。
この夏の夜の記憶は、将来何があっても消えることがないと分かる。
私の存在も、そうなるだろうか。
「もちろんだ」
小さいけど、はっきりと聞こえる声で哲夫が断言してくれた。
おわり
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