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桜が咲く季節が、終わり暑い夏が来た。 今、僕は、病院の一室にいる。 白い天井、壁。アルコールの匂いが部屋を包んでいる。 「起きましたか?」 横をむくとそこには夜月宵先生がいた。 安心させるような笑顔と声音で、話しかけてくる。 「検査の結果…再発していました。手術をしたいのですが……手遅れです。…お力になれなくてすみません。」 宵先生が、泣きそうな顔をする。 そんなに、悲しそうにすることないのに…。 「大丈夫?」 僕が、宵先生に聞き返すと、もっと悲しい顔をさせてしまった。 でも、なぜ。悲しい顔、泣きそうにするのか。僕には、分からなかった。 ただ、僕は、もうあと少ししか生きられない。 その事実だけだった。 「手術が出来なくても、寿命を引き伸ばす治療はあります。それをして…」 そう話す宵先生の言葉をさえぎり、首を振った。 僕には、治療する意思がない。 「学園で生活したい。」 「しかし…。」 また、首を振ると。 「…分かりました。」 宵先生は、小さく呟いた。 「もって、後何年ですか?」 また、悲しい顔をして、 「1年です。治療をすれば、2年が、限界です。」 「分かりました。いつ帰れますか?」 「明日には、退院できます。」 「あと、家族には伝えないでください。」 「それは…。」 僕の家の事情を知っているからか。眉をひそめた。 「秘密にしてください。そういう法律がありますよね?ここには…。」 「ハア…分かりました。少しでもおかしくなったら、言ってください。あと、天龍学園の保健医には、伝えておきますから、運動などは免除してもらうように。」 「うん。」
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