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知人宅からの帰りだった。
夜も更け、周囲の風景は闇に包まれている。
今日は月も出ていない。分厚い雲が広がった。
知人宅は山を二つほど越えたところにある田舎だった。
届け物だけだったのに、夜も遅いからとご飯を頂いたのがいけなかった。
峠道に入る手前にコンビニがあり、眠気覚ましにと珈琲を買った。
明日は休み、腰を据えて帰るかと急ぐ気持ちを抑え珈琲を飲んだ。
そうして走り出すと、後ろから大型車の走行音が聞こえてきた。
一瞬嫌な感じがする。
すると、背後の走行音が近づいてくる気がした。
ん? と反射的にミラーを見た瞬間だった。
「まぶし!」
急に大型車はハイビームを使い出したのだ。
元々、こちらと比べライトの位置が少し高いところにあるためか、バックミラーがその光をもろに反射する。
危うくハンドルを変な方向へと切り損ねそうになった。
なんだ?
混乱する頭で努めて冷静になろうとすると、ハイビームが止んだ。
なんだったんだ?
疑問がよぎるが、操作を間違えただけかもしれないと、そのまま運転に集中した。
しばらくすると
「うわっ! なんなんだよ」
ハイビームが視界を襲った。
しかし、光はすぐに止む。
その繰り返し
ミラーを見れば、大型車はすぐ後ろに張り付くようにいた。
恐怖
煽られている?
道は細めの一車線。
避ける術もない。
恐怖を幾時間味わっただろうか、時が永遠と感じる。
そして、峠を越えたのか、道が開けコンビニらしき店の光が見えた。
しめた!
車をコンビニへと入れると、大型車も入ってきた。
まずい
転げ落ちるようにして車から這い出すと、店舗へ転げ込んだ。
「た、助けてください!」
その言葉に店員が驚く。
同時に一人の男が店の中に走り込んできた。
「あんた大丈夫か! もうじき警察が来るぞ!」
作業服姿の男がそういう。
「え?」
「よかった無事みたいだな。あんた危なかったぞ。刃物を持った男が後部座席にいるんだよ!」
後で聞いた話だ。
山の麓にある精神病院の患者が脱走をしたそうだ。
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