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謎の訪問者
その時、玄関のインターフォンが鳴り響いた。
「ヒィ?」思わずドキッとして息を飲んだ。
嘘だろう。まさか、こんなに早く旅人か。
『もしもし、杏華。悪いけどこのドア開けてくれない?』
なんとドアの外から声をかけてきた。
「マジかァ?」
もう玄関まであのヒゲづら男がやって来たのか。
「おいおい、冗談だろう」どんなストーカーだよ。どうやってここまで入って来たんだ。
だいたい何で私のマンションの部屋を知っているんだよ。マジでヤバいストーカーなのか。
恐る怖るテレビドアフォンのモニタを映すと見知らぬ美少年が微笑んで立っていた。
「えッええェ……、あれェ?」いったいこの子は誰だろう。この美少年は。
何度見返してもベッドで爆睡していたヒゲづら男じゃない。
スッゴく若くてジャ○ーズ系の美少年だ。かなり年下だろう。見た感じでは十代後半から二十歳くらいだろうか。しかも私好みのジャ○ーズ系の美少年だ。
少し緊張して胸がときめいた。
「ぬぅ」それにしてもおかしい。いつの間にか、美少年に見えるテレビドアフォンに取り変えたのだろうか。騙されたような気分だ。
『杏華。いるんだろう』
その美少年は性懲りもなくドアをコンコンと叩いてくる。まったく近所迷惑この上ない。
「ハッハイ、どなたでしょうか」
仕方なく私はドアチェーンを掛けたまま、扉を少し開け応対した。
「オレだよ。オレ」
さっそく美少年はドアの隙間から懸命にアピールしてきた。可愛らしい顔をしているが見覚えはない。
「どこのオレオレ詐欺ですか。知りません。あなたなんて」
私はピシャッと断言してドアを閉めようとした。だが一瞬早く美少年はつま先をドアの隙間へ挟んで閉めさせないようにしてくる。
「ちょっと、待って。オレだよ。杏華!」
「だからオレッて誰よ。知らないわよ。ヒゲづらのゴリラーマンじゃないし。ドア締めるから脚を退けてください」
「ほらァ、オレだよ。昴だって。一緒にラブホで寝た仲だろう」
「な、なにィ!」
こいつがあの隣りに寝ていたヒゲづら男なのか。確かにクリクリした目に見覚えがある。ヒゲを剃ったらこんなにも美少年だったのだろうか。
「ねえェ、早く入れてよォ」
ニコニコして下ネタを言ってきた。こいつが言うとヤケにエロく聞こえる。
「あのねェ。何が入れてよだァ? だいたい、どうしてこのマンションの場所が解ったのよ」
バッグにGPSでも仕掛けられたのだろうか。それともスマホだろうか。
「だって教えてくれたじゃん」
「な、教えたって、私が?」
「そうだよ。ええェッと、待っててね」
必死に大きなリュックのポケットの中を探っている。
「これじゃァないしィ」ガサゴソと忙しない。小銭に混ざって、ガムやレシート、錠剤のパッケージなど出してきた。
「おいおい、少しは整頓しておけよ。ほらァ廊下を散らかすな。管理人さんに叱られるだろう」
見ていられない。美少年はリュックの中のゴミを散乱させていく。
「あったあった。ほらこれ」
ようやく探し出し、私にメモ用紙を差し出してきた。
「ン?」
よく覗いて見ると私の字だ。かなり筆跡が乱れているが間違いない。
ここの住所と部屋番号、マンションの暗証番号、それとスマホの電話番号が書いてあった。
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