スイカと幽霊

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「おばあちゃん。遊びに来たよー」  ジーワジーワと蝉が鳴く道を自転車で十五分漕いだ所に祖父母の家があった。 「わ、大きなスイカ」  玄関脇の手洗い場に大きな金タライが置いてあり、その中にスイカが気持ち良さげに浸かっていた。 「あっつ!」    雪の日にはめっぽう頼りになる風除室も真夏はサウナ並みに暑い。ドアベルを鳴らすが、裏の畑にでも行っているのか返事が無い。畑に行こうとして後ろに何かの気配がした。 「ん? 開いてる」  ドアを引くと後ろにいた何かが私より先にすーっと中へ入って行った。  祖母の家は幽霊が多い。 「おばーちゃーん」  声をかけながら中に入ると風呂場から返事があった。風呂場の掃除をしているらしい。 「おばあちゃん、遊びに来たよ」 「晴菜ちゃん、気付かなくてごめんねえ。午前中に来客があったもんだから色々やる事が溜まっちゃってね」  やれやれと首にタオルをかけた祖母が風呂場から出てきた。 「ねえ、何か入って来ちゃったよ」 「うん? ああ、お盆だからね。色んな人が帰ってくるんだよ」 「でも……幽霊がいるのはお盆だけじゃないよね?」 「そうだねえ。何でだろうね」
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