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九月一日になった。
私は結局学校にはいかなかった。零時と合わせてお気に入りのVtuberが活動休止を宣言した。ところが私はマンションの屋上も校舎の非常階段にも行かず、結局ウダウダとしていた。それでも茹だるような陽射しと昨日のモヤモヤを我慢することに耐えかねて、私は名刺を頼りに鉄道を乗り継ぎ、地下鉄に揺られて知らない街まで冒険に出てみた。
ピカピカと輝く高層ビルの入り口で、私がしわくちゃの名刺に書かれた芸能事務所の受付を前にして、ただ名刺の人物に会わせてほしいと凄むもんだから、きれいな女性は私の訪問に困惑し、それでも取り繋いでくれた。
暫くして彼は来た。スーツ姿をわざと着崩し、洒落た出で立ちでやってきた。
「こんなに早く来るとは思ってなかった。」
彼の困ったような笑顔に、私はただ黙ってカバンを掲げた。そこにはブサイクなクマのぬいぐるみがストラップとしてついていた。それを見て、彼は先ほどとは異なった笑顔を向けてくれた。
私は彼の目を見て、きちんと伝えた。
「恋を知りたくて生きることにしたの。だから、がっかりさせないで。」
彼は、私の目を見て、あの微笑みをまた浮かべてくれた。
「喜んで。」
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