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九月一日に屋上から飛び降りることを決めたのは、日暮の鳴き声がうるさい夕方のころだったと思う。自分の推しのVtuberを見ながら、漠然と自分の中で夏休みが終わらないでほしいと思ったのだ。それから程なくして八月三十一日の夜が来た。
私は最後に旨いものを食べようと、カップ焼きそばとアイスとコーラとをいい加減にカゴにぶち込んでレジに並んだが、研修中の名札の店員はもたもたとしてレジが先に進まない。それどころか、レジの手順を間違えたのか、裏から先輩店員が出てきてその場で説教される始末ときた。私はアイスが溶けることを嫌って、品物を全部戻して店を出た。
子供のころから友達たちと集まった公園を通ってみたが、当たり前だが同級生はおらず、だいぶ呂律の怪しいカップルがベンチでくっついているだけだった。この二人を殺して死刑になることも考えたが、虚弱な私では彼氏に嬲り殺されるのがオチだろう。私は距離を置いて歩いて入り口から最も遠く離れたベンチへと腰かけた。夜だというのに熱気がひどく汗が止まらない。それだというのに、私は親の財布から盗んだクレジットカードとスマートフォンしかもっていなかったので、自動販売機で水一本すら買えないでいた。最後の贅沢までケチがつくのが、私の人生らしいと、私はベンチで一人すすり泣いた。
遠くで祭囃子が聞こえた。
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