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公園で一人で泣いていたら、目の前におっさんがいた。よれよれのTシャツに無精ひげ、履きつぶしたサンダルに缶チューハイという、残念な見た目の人だった。
「お嬢ちゃん、大丈夫?目、真っ赤だよ。」
私はその無遠慮な物言いに腹が立ち、何も言わず立ち上がって公園を後にした。おっさんは困ったように、その場に立ち尽くしていた。
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フラフラと公園に入ってみたら、すでに出来上がったアベックがよろしくやっていて、ホテルに行けばいいのにと思った。そして公園の隅には、手首に傷のある若い女の子が、一人で泣いていた。傷心から目の前で自殺されたら気分が悪くなるので、とりあえず声をかけてみることにした。
返事の代わりにかなりきつく睨まれたが、中々見応えのある顔をしていた。彼女はそのまま立ち去って行った。
ま、こんなもんだよね。おっさんの優しさなんてさ。
自分でも恥ずかしくなって、私は缶ビールを飲み干したが、あの瞳を忘れられなかった。その場で一分ばかしうなってみた。夜の虫が泣きわめき、女の小さな喘ぎ声が聞こえて、それでも、音が消えたとき、あの瞳の向こうの声が聞こえた気がした。
私はそのまま彼女についていくために、自販機でコーラを二本買って追いかけてみることにした。
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