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自分の年を感じて嫌になるが、彼女の足取りは中々速くて、私はついていくのが精一杯だった。最近はビールも控えてハイボールばかり飲んでいたんだけどな。こんなの警察沙汰になるんじゃないかと不安がよぎったが、何故だかここで彼女とは離れちゃいけない気がした。少し小走りで追いかけた。
私は声をかけるタイミングを探した。
祭囃子が近づいた気がした。
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おっさんは確かに私の後についてきていた。これって事件に巻き込まれる前触れじゃないかと、私は少し駆け足気味になっていた。なんでこんなことになったんだろう。そのことをふと考えそうになったが、あちらの足音が大きくなったので、考えることをやめて、私は大通りに向けて急ぎ始めた。
私は逃げるタイミングを探した。
祭囃子が近づいた気がした。
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明らかに避けられている、しかも大通りに向かっている。これ警察に突き出されるやつじゃん。仕事とか家族とかそういうものが頭によぎった。なんでこんなことしているんだろう。そのことをふと考えそうになったが、彼女が明らかにヤンチャしている若造たちにぶつかったので、考えることをやめて、急いで距離を詰めた。
私は今こそ、声をかけないといけないと思った。
祭囃子はすぐそこだ。
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明らかにつけられている、でももう大通りはすぐそこだ。そこで流石に諦めるだろう、というかなんで私なんだろう、こんなつまらない私を追いかけてもいいことないでしょ。そんなことを考えたら同級生たちの顔が浮かんで死にたくなった。そこで私は何人かにぶつかってしまった。
「いてえな、前見ろよな。」
「いやお前こそ、前見ろって。」
「君、一人なの?寂しくない?」
「一緒に行かない?寂しくて死んじゃうでしょ。」
もしかしたら根はいい人なのかもしれない。しかし、今は恐怖しか感じられない。身体がこわばり、動きが悪くなった。一番軽薄そうな男が近寄ってきて肩を抱くようにしてきた。
私は今こそ、声を出さないといけないと思った。
祭囃子がうるさかった。
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「やめてください!」
「うちの娘に何やってんの?」
「え?」
若者どもは中年男性の登場に驚いた。
娘はその嘘に驚いた。
男はその声に驚かされた。
だが、始まった劇を止める訳にはいかない。
「すんません、迷惑かけちゃいましたかね。はぐれたもんで探してたんですよ。ほら、行くぞ。」
男は娘の手を取った。
「いや、オッサン待てって。」
男は、若者どものの最も屈強なものに手を取られたが、身じろぎせず振り向いて睨みを利かせた。
「まだ、なんかあるんすか?」
若者は確かにたじろいだ。娘はその様子を見て、強かに動いた。男の手を強く握って返事を返した。
「お父さんこそ、勝手にフラフラしないでよ。」
男は、内心では再び驚かされていたが、演技は止める訳にはいかない。
「すまんって。ほら、頼まれたコーラ。」
男はそのコーラを娘に渡して、二人でその場を離れた。
二人は祭囃子へと向かって行った。
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