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私が目が覚ますと、オッサンは池の方を見ていた視線を私に向けて、微笑んできた。
神社の出口まで出たときには先程の喧騒が嘘のようだった。交差点まで出てから、オッサンから何枚かのお札を渡された。タクシー代と言われたが、歩いて帰れる距離だ。私は断ったが、彼は頑として受け取らなかった。
「じゃあそれで美味いもの喰って。欲しいもの買って。ともかくやりたいことをやってくれ。」
私は躊躇いながらも受け取った。
「ご、ごちそうさまです。」
これが正しい返事だろうか。彼も首をひねっていた。それからポケットを漁ってくちゃくちゃの名刺を出してきた。その名前を見て私は目が飛び出そうになった。
「君がこんな世界に自分が必要ないと感じたりしてるなら、ここに連絡してくれ。少なくともオッサンは君を必要としている一人だ。」
そういって彼は立ち去っていった。
耳には歌が残っていた。
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