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駅の改札に入ろうとして、ちょうど改札から出てきた男の子とすれちがう。
その顔に、見覚えがあった。
あ、知り合いだ、と思って声をかけようとしたのに、名前が出てこない。
男の子はわたしに目もくれず、通りすぎていった。
だれだっけ……。
遠ざかるその背中から目がはなせない。
すらりと高い背、白いシャツ。形の良い後頭部に、つややかな黒い髪。
……ぜったいに知ってるのに。
わたしは改札をくぐるのをやめて、男の子のあとをつけてみることにした。
昼下がりの駅は人があふれかえっていて、じっとりとした熱気が肌にまとわりついてくる。
おしよせてくる人の波間にまだ男の子の頭が見える。波にもぐって時々見えなくなる。
するすると進んでいく男の子を、溺れてしまわないように追いかける。
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