死の予言

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「やあ、待った」 「ううん、私も今来たところ」  ”二人きりで会いたい”とスマホで俺にメールしてきた彼女と俺は今二人きりで駅前に立っている。まるでカップルのように恥ずかしそうにお互いを見つめ合う。 「私、あなたのことが好きなの」 「えっ」  俺の心臓の鼓動がドクンと脈打つ。よし、これはいい展開だ。 「一目あなたを見た時からあなたに恋をしてしまったの。どうか私と付き合ってください」 「……」  俺が静かに駅の時計台をチラリと見る。午後3時37分、俺はアイドルの彼女をゲットした。 「あなたのような素敵な女性と付き合うことが出来るとは、僕にとってとても光栄なことです」  そして満面の笑みを彼女に向ける。それを見てアイカが頬を染める。そうだ。この笑みを見て心を奪われない女などいないだろう。この後俺と彼女は喫茶店に入りパフェでも食べながら少し話をする、そしてその後俺はアイカとホテルに行きセックスをする。きっとそうなるに違いない。いやして見せると俺の中の性欲が言っている。 「うれしい」  彼女が両手を俺の胸に当て軽く体重をのせてくる、それは心を許した女性のしぐさそのものだ。そんな彼女の体を俺がやさしく腕で抱きしめる。よし、俺は確実にこの女とやれる。俺が辺りをそっと見回す。もしこんな所を彼女のファンにでも見られたとしたら大変なことだ。もしそうなったら彼女と二人でホテルに行くどころではなくなる。どうやら彼女のファンはいないようだ。それはそうだろう。もしファンがこの光景を見ていたら「殺す!!」とか大声を出して叫んでいるに違いないだろうから。俺が彼女の体をそっと離し、喫茶店に向かって彼女を誘導する。ああ、そうだ。その前にマキに別れのメールをしなくてはならない。アイカが俺から目を話した隙きにマキにメールをすばやく送る。よし、これですべては済んだ。その時俺の体を刺すような痛みが走る。何だ? さっきの五寸釘が刺さった傷が痛むのか? 反射的に俺の右手が後ろを探り、何か金属質のものを触る。これは一体? 「死んでくれるって言ったよね」  聞き覚えのある声が俺の後ろから聞こえてくる。 「死んでくれるって言ったよね」  更に俺の背中に激痛が走る。この声は間違いない、マキだ。どうして彼女がここに? 「どうしたんですか」  アイカはまだこの状況に気がついてない。彼女に気づかれずにマキを組み伏せ、そしてアイカとホテルに行きセックスをする。そんなことが可能だろうか?  「君は僕というものがありながら、そんな若い男に抱きついて、僕の心なんか君は何とも思っていない、僕が借金をしてまで君に貢いできたその結末がこれか、そんなのひどすぎる、そうだよ、ひどすぎるよ、だから君は罰をうけなければならない、そうさ、これは君が受けるべき天罰なんだ」  やたら粘着質の大きな声を上げた頭頂部の髪の毛の薄いあの日アイカを襲った男がサバイバルナイフを持って立っているのが俺の目に見えた。アイカはそんな男に怯えて震えて立っている。このままだと彼女はあの男に刺されて殺されてしまうだろう。いや、おれがマキに殺されるのが先だろうか? どうする、俺はどうすればいい。 「死んでくれるって言ったよね」 「痛っ!!」  その時俺の頭の中にある考えが浮かんだ。俺は咄嗟に左手でアイカの頭を掴み俺の顔に引き寄せ彼女とキスをする、当然舌を彼女の唇の中に滑り込ませる。 「この野郎。ぶっ殺す」  男の怒鳴り声が聞こえる。俺はアイカを左手で脇に突き飛ばす。ストーカー男がナイフを手に俺の方にやってくる。よしこれでストーカー男のターゲットは俺に変更された。俺が襲われている間に彼女を誰かが助けてくれるだろう。でも、俺はどうなる? 突然頭を強く殴られ俺が横に倒れる。 「うわっ」 俺が頭をおさえながら顔を上げると、ストーカー男とマキに刃物で刺されて血まみれで倒れていくマサルの姿とこっちに向かって走ってくる警察官の姿が見えた。 
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