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「…樹!」
大学の門を出て、すぐ近くにあるバス停に向かって歩いていた俺を、後ろから呼び止めたのは遥だった。
「…遥…?」
「ごめんね突然…。……少しだけ…話を聞いてほしいの…」
遠慮がちに言う遥の様子は、最後の電話で俺を冷たく突き放した人物と同一とは思えない。
心なしか最後に見たときよりも痩せて、雰囲気も疲れているような気がする。
だけどそんな遥を見ても、俺は自分が思っていたよりも同情できていないことに気づき、驚いていた。
「…今更…話すことなんてあるの?」
思わずこんな言葉が出てくるくらいだった。
「そうだよね、わかってる…。でも…お願い。3分だけでいいの…。」
俺が遥を見る目は、どんな風に映っているのだろうか。
遥は怯えたような声で俺に頼み込んでくる。
「…少しだけね」
だけど俺はやっぱり遥が何を話し出すのかが気になり、少しその場で話を聞くことにしたのだった。
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