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「あのね、樹……私…妊娠したの。」
遥が腹部に手を当てながら、声を震わせてそう言った。
「…え…!?」
「驚いたよね…。私もびっくりしてる。」
遥の目には何故か涙が溜まっていた。
俺は、そんな遥の様子を見て、言うべき言葉は一つしかないと思った。
「…おめでとう遥。」
しかし遥は、俺の言葉に驚いたように目を見開いた。
「……おめでたくないよ…」
「え?……例のカレとの子供でしょ?」
「違うの……」
遥が言いにくそうに口を閉ざしながら頭を振る様子を見て、俺はある一つの信じ難い可能性を頭に浮かべた。
「もしかして…」
「…樹との子なの……」
俺が思いついた可能性を瞬時に肯定され、驚くよりもまず戸惑った。
「え…俺と遥の子…?」
「うん…。あの人の子ではないから…そうなると必然的に…」
「…それで…カレはなんて…?」
「……堕ろせ、って。樹との子供なんて、産むな…って…」
そう言われた途端、俺の視界は真っ暗になった。
そんなこと……
「……遥はそれでいいの!?堕ろせって言われて、それに同意したの?」
「したくないよ!私だって…お腹の子を殺したくなんかない……。でも……」
「じゃあよく考えてみてよ…!」
「考えたよ!!考えたけど、もうそうするしかないんだよ……」
遥はそう言うと、人目も憚らずにその場に泣き崩れた。
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