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それからしばらく、俺と遥は子供をどうするかについて話し合った。
俺は自分の子だと分かった今、簡単に堕ろそうとしている遥を止めることしか頭にない。
一方の遥は、俺への愛情が無いのに俺との子供を育てられる自信がないと言って譲らない。
そもそも、産むことすらしたくないとまで言う…。
この話し合いは1週間程続き、結局俺が諦める形で決着が付いた。
「……ごめんなさい……本当にごめんなさい…」
何度も謝りながらお腹を擦る遥は、自分の中に宿る生命を消してしまう選択を決して簡単に下した訳ではないのだ。
俺は遥のやりきれない気持ちを汲んだからこそ、中絶費用を払い、病院に付き添い、水子供養までした。
遥に会う度に…一連の流れを行う度に…
俺は自分の子を諦めてしまった罪悪感で泣かずにはいられなかった。
それは遥も同じなのだろうか…
遥も毎日泣いているように見えた。
ところが、供養当日。
例の「カレ」が遥を迎えに来たのだった。
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