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あの日から、遥とは何度か電話を通して話した。
だけど遥の気持ちが変わらないのは勿論、溜め込んでいた俺への不満を告げられる事もあった。
そして2人のアパートの部屋に置いていた遥の私物は、俺が部屋にいないときを狙って遥が取りに来ていた。
徹底的に俺と顔を合わせないようにしていたのだった。
そんな風に淡々と2人の関係が終わっていくことを、俺は半分夢でも見ているかのように感じていた。
ある時、俺が昼食をとっていたときに珍しく遥が連絡なしに荷物を取りに来た。
「…あれ、遥?」
「…あと荷物これだけでしょ。最後に取りに来たの。鍵も返したいから、樹くんがいる時に来た。」
「そっか…。」
「うん。……じゃあ、そろそろ行くね。…樹くん、今までありがとう。」
終始素っ気ない返答をしていた遥が、最後の言葉だけにいつものような柔らかさを含んできた。
「こちらこそ、本当にありがとう。…幸せになってね。」
俺は精一杯、そう言って送り出すしかなかった。
「樹くん、他にも女の子いっぱいいるだろうからね。モテるし、留学先でもいい人いたんじゃないの?」
「いないよ、そんな人」
「……とりあえず、私にはもう連絡しないで。繋がってるだけで迷惑だから、SNSも全部ブロックしてね。」
「……うん…」
「じゃあね〜」
そう言い残して、遥は振り向くこともなく荷物を手にして部屋を出た。
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