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プロローグ
関ケ原女子学院中学出身、一条羽菜。
羽菜は、未だかつて敗北した経験が無い。一番であることが当然だから、順位を気にしたことも無い。下なんて見る価値が無いし、存在しないのと同じ――十五年間、ずっと、そう思って生きてきた。
一番である羽菜は、敗者の心情なんて知らない。そして関心も無い。
二〇〇九年一一月。ある政治家が『二位じゃダメなんでしょうか?』と疑問を呈した。
解は、条件による。一位が二位になるのは問題が有り、二位以下が二位になる場合は問題が無い。一位と二位との間には、絶対に覆すことが出来ない隔たりがある。
それは、社会の中で深く刷り込まれている。
二つを振り分ける、代表的な呼称――。
マスタとスレーブ。マスタは主人、スレーブは奴隷を示す。一番以外は〝奴隷〟。
機器や装置、ソフトウェアやシステムで用いられる。
プライマリとセカンダリ。プライマリは主、セカンダリは従属や代替、補助を示す。メインとサブでも同様。一番以外は〝予備〟。
勝者と敗者。全勝しているのは、一位のみ。二位以下は、全員が何者かに敗北している。
二位を三位よりは良いと主張する人はいる。でも二位以下は、上にあるものの数が違うだけで同類。一位だけが何も無い。有と無は対極の関係。絶対に同類になることは無い。
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