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「俺は、音羽とはなんとなく付き合い出して、あの頃は大切にしようと思っていたけど、離れることになってさ。子どもだったから諦めたとこもある。あれから随分経つし、もう恋愛感情はなくても、幼なじみだからずっと友達でいようと思ってた。 でも彼女は…梨香子は、毎日近くにいて、どんな子かわかった上で、俺が自分から好きになったんだ。 それを否定するんじゃ、音羽とはもう友達でいられない。」 「飯田くん…」 「優香も同僚として仕事の範囲内では付き合うけど、音羽の肩を持つならもう…」 「…篤くん、私は…」 肩を落とし涙を流す音羽に優しい言葉をかける気持ちにはなれなかった。 「飯田くん、音羽は私が見るから。」 優香がそう言ってくれたので、篤は会計だけ済ませて店を後にする。 無性に梨香子の顔が見たくて、電話したが出ない。 きっとまだ一生懸命に仕事をしているんだろう。 落ち着かないままタクシーを捕まえると会社に向かう。 すれ違ったら仮眠して朝イチで会いに行こうと思ったが、駐車場に梨香子の車を見つけ、管理棟の2階、一課の辺りにまだ電気がついているのを確認して篤は事務室に急いだ。
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