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浅倉梨香子は、幼い頃から人付き合いが下手だった。 幼稚園では、だいたいひとりで本を読んでいるか空想の世界でたくさんいる友達と遊ぶような子で特定の友達はいなかった。 小学校に入り、四年生の時にやっと自分と同じようにおとなしそうな友達が2人出来る。 2人は近所同士だったが自分だけ家が反対方向だったから、子どもの足には少し遠かったが無理をしてでも遊びに行っていた。 学年があがり、2人と同じクラスだった事を喜んでいた5年生の時、些細なきっかけで梨香子に対するいじめが始まる。 強くないくせに虚勢を張る梨香子は、どんどんドツボに嵌り、すっかりクラスの目立つ子達のターゲットになっていた。 一番耐えられなかったのは、リーダー格の女子から話しかけられた時、トイレに行ったら「逃げた」と個室を覗かれた事だった。 「なんで……」 「だって逃げたと思ったから……本当にしたかったんだ。」 さすがに耐えられないと泣いていると担任の女性教師により学級会が急遽開かれた。 「浅倉さんに何があったか知っている事があれば、話してちょうだい。」 教室の中は誰も声を発しない。 担任は、こんなやり方で解決すると思っていたのだろうか。 あきちゃんとのんちゃんは、きっと何か言ってくれる……そう思って2人の方を見た時、あからさまに視線を逸らされ、梨香子は誰も助けてくれないと理解した。
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