17人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
バスのブレーキで目を覚ました。事件現場の最寄りに到着していた。僕は彼女と居た席を一度眺めてからバスを降りた。
当時ショッピングセンターだった場所は広い公園になっていた。木々も多くどこまでも緑が続いている。
僕はバスを降りて近くの店で買ったカッターナイフを手に、人工的に作られた沢沿いを歩いて、夕方になり人気の少ない場所にたどり着いた。
水辺に座り込んで空を一度仰ぐ。夏の夜空に天の川が僕たちを阻むように輝いている。睡眠と死は似ているのかもしれない。僕たちはその狭間に居る。
「願いが叶いますように」
一言呟いて左手首を斬り付ける。
迷いなんてないから深い傷となって痛みが走る。それを気にしないで沢に腕を沈めた。流れに赤く色付いていた。
元々眠かったのもあったのか直ぐに気が遠くなるのがわかる。
「会おうよ」
こんな呟きがこの世界での僕の一番最期の詞になった。
おわり
最初のコメントを投稿しよう!