君と会う天の川はとても遠い

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 バスのブレーキで目を覚ました。事件現場の最寄りに到着していた。僕は彼女と居た席を一度眺めてからバスを降りた。  当時ショッピングセンターだった場所は広い公園になっていた。木々も多くどこまでも緑が続いている。  僕はバスを降りて近くの店で買ったカッターナイフを手に、人工的に作られた沢沿いを歩いて、夕方になり人気の少ない場所にたどり着いた。  水辺に座り込んで空を一度仰ぐ。夏の夜空に天の川が僕たちを阻むように輝いている。睡眠と死は似ているのかもしれない。僕たちはその狭間に居る。 「願いが叶いますように」  一言呟いて左手首を斬り付ける。  迷いなんてないから深い傷となって痛みが走る。それを気にしないで沢に腕を沈めた。流れに赤く色付いていた。  元々眠かったのもあったのか直ぐに気が遠くなるのがわかる。 「会おうよ」  こんな呟きがこの世界での僕の一番最期の詞になった。 おわり
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