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そして私は
よく彼とドライブに来た
埠頭へ向かった。
夏の夜
彼と一緒によく来て歩いた場所。
今夜もあの頃みたいに蒸し暑くて
隣にいたはずの彼を思い出す。
涙が止まらない。
これからどうすればいいの。
誰か助けて。
泣いている私に
窓から海風が涼しさを少しだけ運んでくる。
「コンコン」
車の窓を叩く音に
私はびっくりして顔を上げた。
するとそこに
男性が立っていた。
Tシャツとデニム姿で
年齢は私より少し年上くらいに見えた。
ふと現実に戻された私は
じっとその男性を見つめた。
すると
「お姉さん、大丈夫?」
「こんな夜中に埠頭で1人だから心配で声かけたよ」
見ず知らずの人の前なのに
私はまた涙が溢れた。
「何かあった?大丈夫?」
溢れた涙を拭きもせず
「もう生きる意味が分からないんです。
ごめんなさい。」
そういうと男性は
「お姉さんが車で来てから様子見てたけど、何となく様子が違う気がして、心配で見てたんだよ。
俺で良ければ、話聞くから話してみなよ。」
蒸し暑い夜のせいか男性の汗が
額から流れ落ちるのが視界に入った。
「暑いのに外に立たせてごめんなさい。私は大丈夫なので車に戻ってください。」
そういうと
男性は自分の車の方を見て
「俺もさ、色々あって、海釣りでもしながら息抜きしようと思って釣りの準備してきたんだけど、餌買うの忘れて、やっぱ考え事しながらじゃダメだなぁって思ってたとこだったんだよ。」
「お互い知らない同士だし、良かったら少し外に出て話さない?俺も誰かに聞いてほしかったりするからさ。嫌じゃなければだけど。」
そう言って暗い海を眺めた男性の横顔が
私にはどこか悲しげに見えて
おいていけない
そんな気持ちになった。
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