あなたとわたし。

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そして私は車から降り 2人で並んで薄暗い海を眺め コンクリートにあたる波の音を 静かに聞いた。 しばらく沈黙が続いた。 すると男性が 「生きてくって何なんだろうな」 そう呟いた。 なんとなく私は 今までの彼との出来事を話し始めた。 男性は最後まで黙って聞いてくれた。 そして男性も自分に起きた出来事を話してくれた。 私は恋人に裏切られ 男性は仲間に裏切られた。 お互い信じていた人からの 思いがけない行為に傷ついた者同士だった。 「なんだか似てますね」 「ほんとだね」 たまに吹く海風に心が癒やされたのか さっきまでの辛さが少し和らいでいた。 「やっぱ夏は夜でも暑いね」 男性は汗をかいた額を手で拭った。 この男性は私にどうして優しいんだろう。 暑いのに気を使って外で話して。 薄暗いなか、ちらっと男性の横顔をみた。 遠くを見る横顔に一瞬ドキッとした。 さっきは泣いていたから よく顔が分からなかったけど 鼻筋が通っていて、 女性には困らなそうな顔立ちをしていた。 視線を感じたのか男性は 視線をこちらに向けずに 「あのさ、良かったらまた話さない?」 私はまたドキっとした。 見つめたのバレちゃったかな。 「え?あ、はい。私もまた話したいです。」 「よし、じゃあとりあえずお互いの名前から!」 そう言うと男性は携帯を取り出し アドレス帳に私の名前を登録した。 私も男性と同じように携帯に名前を入れた。 そしてお互い番号を交換。 「これでOKだね。また会おう。」 そう言って こちらを見てニコっとした男性。 私はきっとこの瞬間に恋をした。 悲しい出来事なんて無かったみいに。 2人の夏の恋物語は ここから始まった。
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