彼のオレンジジュース

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オーダーを取った店員が厨房に引っこむと、容介は口元を手で押さえながら溜息をついた。井戸の底から引き上げた水のような、深い深い溜息だった。 「オレンジジュースで……いいの?」 容介は、会社の同期の中でいちばんの酒豪なのだ。 「良くねえよ」 投げつけるように容介は言った。それから無作法を繕うように薄く笑いを浮かべ、口の横に手を添えて顔を近づけてきた。私も顔を寄せる。 「実は俺、呪われてんだ」 赤点のテストでも見せるように、ひそひそと容介はささやく。私は息を飲んだ。 「嘘!? 何それ」 「マジなんだよ。俺、マジで呪われ……」 「お待たせしましたオレンジジュースでございまーすっ」 先程の若い店員がジュースを運んできたので、容介は言葉を区切った。渋い顔のままの彼と、びっしり水滴をつけたグラスを合わせる。 おつまみを数点追加オーダーすると、容介はまた溜息をつき、重々しく口を開いた。
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