彼のオレンジジュース

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ゆるふわ系の彼女と別れたと聞いた私は、ラストチャンスとばかりに全力で容介を労わり、慰め、遊びに誘い、自分の存在感をアピールした。決死の色仕掛けも試した。 けれども彼はこちらの気持ちに微塵も気づくことなく、あっさり今年入社の新人と付き合い始めたのだ。 ゆるせない。ゆるさない。 こんな屈辱をわたしに与えたのは、人生において彼だけだ。 容介はいくつか思い違いをしている。 呪いのサイトなんて、少なくとも私は知らない。人づてに、口コミでひっそり広まっている呪い専門サロンを探し当て、順番待ちをして、ようやく申し込めたのだ。 費用だって、3万や5万じゃない。いちばん安いスタンダードプランで、ひと月10万円だ。それを3か月ぶん、定期預金を崩すことでなんとか工面して申し込んだ。
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