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烏龍茶を飲みながら待っていると、木製の引き戸をがらがらと開ける音がして容介が入ってきた。
若い女性店員に案内されて私のテーブルまで来るなり、自らをどさりと椅子に放りだすように向かいの席に腰かけた。全身から疲労感が漂っている。
「お疲れさま。残業きつかった?」
「うん……まあ……」
ネクタイを雑に緩めると、容介はテーブルに肘をつき、親指で目頭をぐりぐり押している。その仕草は彼の年齢を実際以上に高く見せた。
「とりあえずビール?」
少しべたべたするメニュー表を容介のほうに押しやりながら、ビール好きの彼に訊くまでもないことを訊く。容介は固い顔でうなずき、水とおしぼりを運んできた店員に向かって口を開いた。
「ビール」と、あるいは「生」と言おうとしたその口はしかし苦しげに歪み、Oの口に開かれる。
「……オ……オ……オレンジジュース」
私は驚き、容介の悔しそうに歪んだ表情を見つめた。
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