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真っ暗闇、どこまでが陸地でどこからか水平線なのかわからない。
曇り空は星さえも出ていないから、波の音だけがザップ―ンと聞こえるだけで怖いものがある。
「お、風が出てきた」
「星、海―!」
野郎ばかりのワゴン車の中が一気に賑わう。
ゴン、ゴン、ゴン。
窓を叩く音に、スイッチを押した。
むっとした風がエアコンの風を押していく。
それと同時にドカドカとものすごい音楽が入り込んできた。
「時間だ、用意しろ」
マネージャーのいやそうな声。
虫が多くてかなわねえといっている。
虫よけ、スプレー!
車から出ると速攻でまき散らし、汗で濡れたTシャツが薬臭くなるまでかけた。
「二年ぶり」
「彼女来るかねー?」
「さああな」
「いいんじゃないの?海外にファンができたんだし」
まあな。
俺達五人は並んで、二年前、ここであったことを思い出していた。
「リハーサル始めまーす」
「行きますか?」
「軽く流すよ」
俺達はステージへと向かった。
運命の出会いなんて、その後があるから言えることで、出会わなければ運命なんて思わない。
一期一会のように、出会ってさようならじゃ運命なんて言わねーし。
次がある、明日がある、たどり着けない未来に絶望するより、明日が絶対来るという未来の方が運命的、言葉じゃなー。
運命ねー。
俺達はここである女の子と出会った、それはまるで花火のように、はかなく消える、何気ない日常のエピソードだったとおもう。
でもそれは、俺の中で何かを動かした。
その後すぐに新曲ができた。
あんまりうまくもない詩ができた、けど俺の今の気持ちと言ったら、みんなに褒められた。
「よろしくお願いしまーす」
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