あの日の約束

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「アラモアナ公園のビーチ沿いに並んでいるヤシの木の下で待ち合わせをしよう」  そう言ったのは彼女だった。 「ヤシの木なんて沢山あるから分かりづらいんじゃないかな」  僕がそう言ったら、「ビーチ沿いにあるヤシの木の中で一番大きな木を探すの」、と彼女に言われ、そうする事にした。  何となく分かるだろう、とその時は思っていた。だけど僕が彼女に会ったのは五年も前の事だ。それもたった一度きり。容姿が変わっているかもしれない。やはり、もっと分かりやすい場所にしておけば良かった、と激しく後悔した。  必ず彼女が来ると約束されているならば、それでも良い。  だけど彼女が本当に来るかどうか、それは分からない。  彼女との文通は一年前から途絶えていた。  冷静に考えれば、彼女は来ない。  そう思うのが普通な気がする。  きっと彼女は来ない、最後にやり取りした手紙の後、彼女の身に何かが起きたのだ。もしかしたら、僕と会うのが嫌で文通を辞めたのかもしれない。いずれにしても、彼女は来ない。  そう思っているのに、僕がここへやって来たのは、百分の一、千分の一、例え万に一つの確率でも、来るかも知れないという微かな希望を信じているからだ。  彼女はきっと来る。もしも来ないのであれば連絡してくれる筈だ。そう思う事で、気分を上げようとした。  だけど、一番大きなヤシの木の下で待ち合わせなんて、そんな曖昧な場所では心もとない。  果たしてどの木が一番大きいのだろう? アラモアナ公園には沢山のヤシの木が生えている。一番大きなヤシの木を見つける事、それに来るのかどうか分からない彼女を見つけ出す事、僕は途方に暮れた。
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