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五年前のクリスマス、丸の内にある大きなホテルのバンケットルームで催された企画、がんサバイバーの集いに、僕達は出席していた。
大学を卒業して大手の証券会社に就職して四年、社会人として順調に歩みだし、一人前になって、さぁこれからと言う時に、浴びせられた、がんの告知。
目の前が真っ暗になる。と言う表現が正しいのか、頭の中が真っ白になった。と言うほうが適切なのか、正直なところ良く分からなかった。
ただ目の前にあったのは、漠然とした不安だったように思う。
どのような治療を受けるのだろう、仕事はどうなってしまうんだ、両親にどう伝えるべきなのか、将来はどう転じて行くんだ、僕は死ぬのだろうか、痛むのだろうか、苦しむのだろうか……
いくつもの不安が重なり合って大きな塊になり、頭の上から覆いかぶさってくるような、逃げ場のない不安に閉じ込められていた気がする。
そんな折、主治医の実方先生に紹介されたのが、がんサバイバーの集い、だった。がんの宣告を受けた日本全国の患者が集まって、体験談や悩みを共有し、患者同士の交流を通じて、がんと闘って行くモチベーションを高めあう、そんな主旨だったと思う。
壇上でがんを克服したスポーツ選手が語る。そして度重なる再発を乗り越えて復帰を目指している医師が訴える。
「病気になったからって、人生が終わる訳じゃない」、と。
何人かのスピーチが終わると、真っ黒に日焼けした男性が壇上に立った。ランニングシャツに短パン姿で、首からいくつものメダルをぶら下げた男性は、大きな声で聴衆に問いかけた。
「この中でホノルルマラソンを走った事がある方はいますか?」
この問い掛けが、僕達の出会いの切っ掛けになったんだ。
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