部屋着に塩を

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 しかし、ナスミさんの疑問は当然のものかもしれない。  いくら故人とはいえ、まだ大切に昔の恋人の写真を持っているとなると、少し心配になるのは仕方がない気はする。  さらに彼女とナスミさんは知り合い同士だったわけで、気にするなというほうが難しいのかもしれない。  別に嘘を()くわけでも気を遣うわけでもなく、僕は本心から、もう好きではない、と伝える。  するとナスミさんは納得したのかしていないのか、よくわからない具合の生返事を返してきた。  そういえば、ナスミさんにはそのあたりのことを詳しく話していない気がする。  僕と彼女の交際は彼女が亡くなった後から始まったので、もしかしたらナスミさんは自分が彼女の代替品(だいたいひん)だとでも思っているのだろうか。  しかし実際のところは、彼女が存命であった頃から、僕はナスミさんに気があった。  ナスミさんと彼女と僕は学生時代からの知り合いだったので、彼女との交際が始まったあとにナスミさんを好きになってしまってから、一体どうすべきか悩んでいたことをよく覚えている。  我ながら浮気性なのだとは思う。しかし彼女の不幸がどうあれ、既に僕の心はナスミさんを選んでいたわけで、きっと結末は変わらなかったはずだ。  彼女に別れ話を切り出せなかったのは、ひとえに僕の小心さゆえのすれ違いだったわけで。
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