部屋着に塩を

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「いや別に、気にするというか、まぁ確かに仲良くはなかったけど、一応は知り合いだったわけだし」  ナスミさんは答えた。  しかし仲が良くない、というよりも、僕が記憶している限りはむしろ彼女達は仲が悪かった。そのあたりを濁して答えたのは、ナスミさんなりの矜持というかプライドみたいなものだろうと理解はする。  ナスミさんは続ける。 「いやそんなに深く考えないでよ、ちょっとした興味本位なんだから」  人の死因を探るのは良い興味とは言えないが、彼女とナスミさんの仲が悪かったのは、結局のところ僕のせいであることは解っているので、なんだか責任は感じる。 「いや、ひどい食中毒だったみたいでさ、最期は正直、見てられなかったよ」  少し考えて僕はそう答えた。  こう答えておけば、凄惨だったであろう思い出をこれ以上は深掘りしには来ないだろう。  彼女の不幸を利用するようでなんだか申し訳なくもなったが、一石二鳥ではあるのだ。 「あ、そうなんだ。まぁ事件性がないのであれば、安心した」  ナスミさんは少し怖いことを言っている。  ――事件性。  僕は少し、背筋が縮まった。  それに、どこかガッカリしているような声色にも聞こえる。  いくら仲が悪かったとはいえ、人の死に抱く感情と言葉としては、まともなものではないように思えてしまうが、きっと気のせいであると信じたい。
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