部屋着に塩を

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 しかし、モヤモヤする。  僕は一体何を約束したのだろう。  今更ながらに気が付いたナスミさんの人間性にもモヤモヤするが、彼女との約束の内容にこそ、モヤモヤする。  僕は少し考える。  ――今際(いまわ)(きわ)に発したことだ。おそらく軽いものではなかったはず。  そう考えると、やはり何とかして思い出してあげたい。そしてまだ間に合うものであれば、叶えてあげなければ具合が悪い。  雑念を負ったまま荷造りをしていると、必然、作業は(はかど)らない。  するとナスミさんはまた詰め寄ってくる。 「まだ考えてる。ちょっとさ、後にしようよ。何を約束したかなんて知らないけどさ、そんなことは取り敢えず片付けてからにしてよ」  今度はあからさまに不機嫌さを伝えてきた。  ナスミさんの気持ちもわからないでもないが、僕も思う。  ――そんなこと?  さすがに今の言葉は看過(かんか)できない。  今に集中していない僕も悪いが、でも、故人の想いと思い出を(ないがし)ろにする権利がこの女にあるのかと、僕は更に苛立ちが集った。  ……そんなことって、なんだ?  あまりにも腹が立ったので、僕は言葉に出した。
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