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くらくら揺れる
翌日。
罪人ウィルが城に連行され、聴問官は彼に真実薬を飲ませました。
真実のみを吐かせる真実薬は、裁きの前の審問には欠かせません。
「昨夜の花火はお前がやったのか」
薬が効き始め、罪人の頭がくらくらとしてきたところ、審問が始まりました。
若き新国王も玉座でお聞きになります。国賊の裁きは王様がくだすからです。
「はい。私だけが火炎魔法を使って花火をあげました」
聴問官は善良な農民でしかなさそうな青年の返答に、とまどいました。この男が本当にやったのだろうかと。
自動書記の羽ペンの記録していく音がカリカリと響きます。
「国全体で喪に服し、祝い事などの祭典が禁じられているなかでの行為。それはつまり、反逆行為となるが、国に不満や怒りを持っていたのか」
「いえ。私はいまのくらしに満足しており、盾突く気などもうとうございませんでした。しかし、やったことは悪いことです。罪は償います」
ますます聴問官はわけがわからなくなり、薬を飲んでないのにくらくらしてきて、頭を抱えました。
「ならば、なぜやった」
「話せば長くなります。里の歴史に関わる話なのです」
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