【狂った歯車】

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「父ちゃん!!母ちゃん!!」 その男の子は夏の夜になると必ず海辺に行き、父ちゃん母ちゃん……一太郎と小夜子に会いに行った。 そう……小夜子は自分の命と引き換えに、その男の子『一太郎』を産んだのだった。 「父ちゃん、母ちゃん!今年の夏は花火をやろうと思ってな?たくさん花火を持ってきたかんな?」 『一太郎』はそう言うと花火に火をつけ、小さな打ち上げ花火を空に放った。 「父ちゃん、母ちゃん……綺麗やなぁ……」 『一太郎』がそう呟くと…… 一太郎と小夜子は幸せそうに手を取り合い次第に天へと登り始めた。 「父ちゃん、母ちゃん……もうお別れの時が来たんやな?……おいら、父ちゃんと母ちゃんが次こそは平和な世の中に生まれ変われるよう祈ってるでな?」 すると一太郎と小夜子はニコリと『一太郎』に微笑みながら打ち上げ花火と共に消えて行った。 【了】
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