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繁華街に並ぶ新しい高校の校舎があった。
高校二年生の藍染 響(あいぞめ ひびき)は、その新校舎へ転校して来た。
家庭の事情もあり、父親が転勤族の会社を勤め、母親と一人娘の響は、何度も引越しを経験していた。
「響、今日から新しい学校へ行くんだから、皆んなと仲良くするのよ」
朝食を済ませた響に母親が心配そうに見つめる。
「もう、慣れてるから平気だよ。私は無関心を貫くの」
響は冷めた表情で鞄を手に持つと、玄関へ向かう。
「お願いだから、クラスの皆んなと仲良くして。一人で壁を作ったりしないでよ」
「大丈夫!私はもう自分の生きる術を身につけているから!」
彼女はそう母親に強く言うと自宅を後にした。
それからしばらく響は駆け足で学校へ向かった。
行きたくない気持ちを無理矢理、抑える為だ。
父親の仕事は理解しているつもりだし、生活はどちらかといえば裕福な方だと響は思っていた。
だから自分に置かれた状況は仕方のない事なのだ。
そう自分に言い聞かせるしかなかった。
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