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それから暫くして山崎は破壊されたAIドクターを引き取ったラボに向かった。
そこでは白衣を着た研究員が忙しなく動いていた。
山崎はその中の一人に声をかけた。
「あ、君、ここに例のAIドクターが保管されてると聞いたんだが」
「え?…あ!あなたは山崎先生ですね?」
「なんだ、僕を知ってるのか?なら話が早い」
「えぇ、恩師がお世話になったので」
「あ!あぁ、君は片桐博士の……その節は助けられなくて申し訳ない」
「…いえ、仕方ない事だと思ってます……それより私どもの開発したAIドクターが大変な事をしてしまって…」
「…いや、その事なんだが……なおしてもらえないか?」
「え?いえいえ、我々は医者ではないので身体を診るなんてできませんよ」
「いや、そうじゃなくてそのAIドクターを修復できないのかと思って」
「え?は?……なぜ?」
「あれから色々と考えたんだが……もしかすると、命の恩人かもしれないと思うんだ」
「何がです?」
「勿論AIドクターだよ」
「ま、まさか!殺しかけたって聞きましたけど!?」
「確かに今までの常識ではそうなんだが……例えばだ、現代の最先端医療と言っても原因と結果を1つ2つ繋ぎ合わせているに過ぎない」
「はぁ」
「わかりやすく将棋で例えるなら3手くらいのつみ将棋をしてるようなものだ」
「そうなんですか?」
「そうなんだ、しかしもしそこに名人の様な人が現れたらどうなる?」
「どうなるんです?」
「何百手先をも見通して打つ一手は我々には理解できない」
「はぁ、まぁ」
「理解はできないが、それが最善の一手なのだとしたら?」
「え?……それって、まさか?」
「そう、そうなんだ、そのまさかの一手をAIドクターは打てるのかもしれない」
「かもですか?」
「まだ、可能性の段階だが、現に僕はこうして完治した」
「な、なるほど……それじゃあ」
「そうだ、AIドクターは人類の希望になるかもしれない」
「それが本当なら片桐博士も喜びます!」
「あぁ、そうだな……でも」
「でもなんです?」
「博士もAIドクターに定期的に診てもらってたんだろう?なぜ治らなかったんだろう?」
「あ、あぁ……なんだかまだ誤作動を起こすって言ってました」
「誤作動?」
「えぇ……注射器を持って頭を押さえつけようとしてくるって」
了
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