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「じゃあ会社に戻るね。また連絡する」
立ち上がってからテーブルの上の伝票を掴み、もう片方の手でオンナにバイバイと手を振ってから、虎之助の背後を通り過ぎてレジへと向かった。
その後ろ姿を見送った虎之助は、オンナの張り込みを開始する。
海斗の後を追う必要はない。だって仕事に戻るのだから。
海斗の浮気相手、あのオンナが何者なのか、まだわかっていない。依頼者である海斗の妻も、相手の女の事はよくわからないという。
会社の同僚?だったら同時に席を立たなければ休み時間の終わりに間に合わない。いや、同じ会社だったら別々に戻らないとバレてしまうからか。だけど、海斗が店を出てからもう5分が経過しているが、いまだに立ち上がろうとしない。それどころか、すいませ~んと手を上げメニューをもらっている。えっ?まだなんか食うのか?と背中に全神経を集中させて注文のやり取りを聞いていると、ケーキセットを頼んでいた。これじゃあ当分ここから動かない、ということは同僚説は、無し。じゃあ飲み屋のおねえちゃんか?それとも昔からの友達、同級生。それもありうる。
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